前回は狂言《瓜盗人》の案山子について書かせていただきました。

今回は、狂言《瓜盗人》後半で演じられる囃子事「責メ」について書かせていただきたいと思います。

囃子事というのは、囃子(楽器演奏)を伴って演じられる場面のことです。能では囃子事の舞が、ひとつの演目全体の山場にもなっていることも少なくありません。

狂言では、そこまで囃子事が大きな部分を占めることは多くありませんが、やはり様々な囃子事が演じられます。

狂言の囃子事には能に準ずる囃子事が多いのですけれど、この「責メ」は能にはない、狂言独自の囃子事です。

地獄の鬼が罪人を「責め」る様子を演じるものです。「いかに罪人、急げとこそ」というセリフから始まり、竹杖を扱いながら、笛・小鼓・大鼓・太鼓の4つの楽器、または笛のみで奏されます。

しかし、狂言《瓜盗人》に地獄の鬼は出てきません。それなのに、責メが演じられるのは、盗人が案山子の様子を面白がって、村祭りでの鬼が罪人を責める様子を演じるための練習を始めてしまうからです。

盗みに入っていて、祭りの練習を始めるとは、のんびりした盗人もいたもんだ…とも思うのですが、違和感よりも、スマートな場面転換の様子となっているのが、この狂言の秀逸なところかと思います。

なお、同じように祭りの練習として、責メを演じる狂言に《籤罪人》があります。こちらは京都の祇園祭の練習ということになっています。

地獄の鬼が責め立てる様子ながら、実際には村の祭りの練習。そのおおらかさを楽しんでいただければ、と思います。