昨日に引き続いて、演者自身による解説を掲載します。今日の演目は《清水》。太郎冠者役で出演する尾鍋智史です。

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室町時代末期に上流階級でおこった茶の湯文化が庶民階級にも浸透し、一大ブームを巻き起こした時代を背景にしている。競って茶の湯の会を催し、互いに趣向を凝らし、自らの地位と名誉を得ようとする。

そんな主人の下で働く者は大変である。日暮れになってもなお、水を汲みに行けと言いつけられた太郎冠者は、行かせられてはたまらないと思い、一計を案じ、主人をだまそうとし、必死に奮闘するが、難なく見破られてしまう。

狂言《縄綯》においては博奕のかけものにされ、この狂言では主人秘蔵の水桶以下の扱いを受ける太郎冠者が、鬼に扮し、立場逆転したところで、日ごろの鬱憤をはらすところが、この曲の最大の主題であり、見どころである。

ところでこの曲で使用される鬼の面は、《仏師》《瓜盗人》《伯母ヶ酒》などと同じように、何かになりきる、あるいは何かに見せるための小道具として使われている。これは能にはない面の使用法である。

ちなみに「野中の清水」とは、播磨の国印南野にあったという名水。印南野は鬼の住む地ともいわれ、狂言《首引》にも登場する。
参考文献:『狂言ハンドブック』(三省堂)(尾鍋智史)

上演日:8月29日(土)「善竹十番」公演1日目

清水

善竹十番公演サイト https://zenchiku.xyz/

志芸の会公式サイト http://www.shigenokai.com/