「演者自身による演目解説」も第六弾。半分以上の数ができて、ようやく揃ってきたなぁという感じです。今日の演目は《止動方角》。狂言の中でも「馬」という大掛かりな役が登場する狂言。執筆は太郎冠者役の阿草一徳です。

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狂言の表現方法として、作者(演者)が観ている者を驚かせたり、少しひとを喰ったようなところがあります。

《止動方角》もその一つで、これは登場人物?の表現のしかたが少し特異な狂言です。何しろ、馬と言う生き物が実体化若しくは具現化されて登場するのだから。

もちろん、狂言には様々な生き物が出てくる。多くは狂言の得意な手法である、観る者の想像力に任せた、「そこに居るかのごとく、表現する」つまり実体はない、もしくは何かで置き換える「牛」「雁」など。または演じる者自身がなり切る「からす」「とび」「犬」「鯛」など。

また、「猿に始まり、狐で終わる」と言われる様に「小猿」や「狐」「狸」なども登場する。この辺りは実物とほぼ遜色のない感じの着ぐるみの様なものを着付けるのだが。

変わったところでは「蚊(蚊の精ではあるが)」「鬼」「閻魔大王」「神鳴(かみなり)」などの空想・想像上の類の者がある。

これは狂言的な考え方の元に面白おかしくイメージキャラクター化されている。この空想上の生き物に関しては誰しも一度はどこかで見たことがあると錯覚するような感じで、とても上手に創られている。

しかし、この《止動方角》の「馬」に関してはそのすべてが当てはまらないのだ!

面(おもて)にしても「こんな顔した馬おれへんやろ!」と思うほどのブサイクさ。確かに歩く動作、いななきなどはそのままだが・・・、だから余計にこの「賢徳」と言う面の特異さが際立って見えるのだが。

こんな事を考えていると狂言とはよくよくひとを喰った、作品の向こうに作者(演者)のしてやったり(ニマッ(笑))感が伺えるものなのだなぁと思うのである。(阿草一徳)

上演日:8月30日(日)「善竹十番」公演2日目

止動方角

善竹十番公演サイト https://zenchiku.xyz/

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