「演者自身による演目解説」ついに8つ目。最後の演目となりました(残りの2番は後日のお楽しみに)。雷神が空から落ちて来て腰を打ってしまうという、なんとも狂言らしい《神鳴》。執筆は神鳴役で出演の牟田素之です。
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「雨風は、身共がままじゃ」と言える神鳴様は、強力な雨男である私にとって、まさに憧れの存在です(笑)
雷様といえば、国宝の俵屋宗達作「風神雷神図屏風」。私はあの迫力ある神々の姿がパッと思い浮かびましたが、この狂言に出てくる神鳴様は、あのような人々が畏怖する神々ではなく、雲間から落ちて腰を打ったり、お礼を真剣に考えたりと、なんだか人間地味たところが垣間見え、逆にそこが一番の魅力なんだなぁと思います。
そしてそんな神鳴様を勤めさせて頂く上で、欠かせない面が「武悪」という面です。この曲以外にも鬼や閻魔(えんま)大王といった役にも使われる面なのですが、腫れぼったいまぶたと、ぎょろっとした眼。下くちびるを噛み締め、歯を見せた口……まさにこの神鳴様のキャラクターの特徴を最大限に引き出している面だなぁと感じます。
この「武悪」を付けさせて頂き、人々と共に生き、雨風を自在に操る夢のような神鳴様に成(鳴)らせて頂きます!!(牟田素之)